食い物日記0011

2000年11月28日

トナーを買いにいく途中で評判の白味噌ラーメンの店を発見。 二条通りを西にいくとある。ネタのためだと高めなのを我慢して食ってみたのだが、 見事に最悪だ。一言で言えばマズイ。下品だ。 下品とは何かと言うと、ケミカルなことである。ケミカルというのは、 味の要素がうまく調和しないことで、 しょっぱさならしょっぱさ、うまみならうまみが 完全に独立して襲ってくるのだ。過剰な味の素。過剰な塩気。過剰な甘味。 どれも最悪なレベルである。 白味噌というのは米が多めにまざっていて、かつ 発酵期間が短いために甘味が強く出ている味噌である。当然その甘味は 麹カビが米のデンプンを分解した糖によるものであって、 足した砂糖によるものではない。だが、このラーメンは明らかに砂糖だ。 というわけで、このラーメンを一言で言えば「あましょっぱ味の素」 あるいは「高いカップラーメン」といったところだろう。

研究室から帰ったら9時を過ぎていた。店はしまっているので 食料が補給できない。やむを得ずメシ炊いてしょうゆでもかけて食うかと思ったら 衝撃の事実。醤油がないのだ。加えて混ぜて炊く麦もない。酒もない。 考えてみればこいつらは学園祭の鍋で使い切ってしまったのである。 冷凍庫にもいつからあるかわからない 捨てるべき魚の内臓が放置されているのみ。 冷蔵庫にも何もない。仕方なくはちみつりんご酢でも飲むかと思ったら、 はちみつの瓶が倒れていてわずかなすきまから はちみつが全て流れ去っていた。流しの上だったので大惨事はまぬかれたが、 はちみつがないことに変わりはない。つまり飲みものも断たれた。 空しい。

2000年11月27日

学園祭の後かたづけの後5人でカレー屋「久留味」。 異様な量と異様な安さで評判の店である。並が450円でメシ500g。 中が550円でメシ750g。ジャンボが650円でメシ1.2kg。 なおいずれもサラダつきである。 ココ壱など相手にならぬほどの安さだ。 ククレカレーまんまという話だが、まあ味も悪くはない。 メシの炊き方がかなり上手いので、むしろおいしいと言ってもいいくらいだ。 ところで出る時のこと。「4人以上のグループで来たら一人タダだから」。 これだけでも度肝を抜かれるのに、 「中ジャンボカツをタダにしたら得だろ」と積極的に損をする親父。 本当に大丈夫かこの店と心配になる。 良からぬ評判もいろいろ立っているこの店だが、 味云々よりもこの不気味な安さが生んだ伝説なのかもしれない。

学園祭の後かたづけの時、なお魚の臭い。授業を受ける人ごめんなさい。

2000年11月26日

学園祭鍋

  朝6時にいっぺいの車でブロロロローっと市場に行き、 タラ(4.4kg)、サケ(3.0kg)、カワハギ(1.6Kg)を購入。タラはキロ500円で とってもお買い得だった。さて、こいつを研究室の低温室に安置して 夕方を待つ。夕方が来た。D号館20番教室がステージだ。 まずカセットコンロでメシを炊く。炊けたころ魚を運びこみ、解体。 カワハギの皮剥き体験コーナーに続いて、サケを豪快にぶった切る。 最後にタラの内臓サルベージ作戦。身はバラす。 学校の教室で誰が魚をさばいていると思うだろうか。 それにしてもタラというのは見栄えの悪い魚である。外見も深海魚っぽく だらしないし、開けてみればみたで緑っぽい不気味な臓器や巨大な白子 がうずまいている。結合組織も緑やら黒やらで美しいという言葉からは程遠い 魚だ。さて、鍋第1段階としてタラとカワハギのアラをブチこむ。 カワハギの身は刺身。うまい。甘さと弾力がたまらない一品だ。 そしてダシが出たころ白子を投入して食う。うまい。ねっとりとしてなんだこりゃだ。 そしてタラの身を投入し、タラ鍋チックに事は進んでいく。もう一つの鍋では サケと大根を煮る。しばらくしてタラの身がなくなったころ、こんどはうどんフェイズ 。だが、これが失敗だった。乾麺タイプのうどんはものすごく塩がついている ということを誰も入れる前には気付かなかったのである。おかげで汁が猛烈に しょっぱくなってしまい、コンブやら水やら白菜やらで薄めつつ食う。 それでも食う。そしてタラ鍋の痕跡がなくなったころ、 サケ鍋が台頭する。大根。うまい。サケ。うまい。 ダシがいい。ノルウェー産の冷凍ものだが、脂ののり方が半端じゃない鮭だ。 そうして食う。そして最後に余った鮭は、網で焼く。 D号館の入口付近で暗闇の中コンロの周りにすわりこむ連中はさぞや怪しかっただろう。 参加表明した人間は6人しかいなかったはずなのに、なぜか最盛期には 18人もの人間が血走った目で鍋を追い、中には他の大学の漫研の人まで 混ざっている始末。18人やそこらはいただろうか。 しかしそれでも魚の量は足りなくならず、けっこうぴったりな量になって 安心した。

  こんなわけでオレと浩平で企画したこの会は大成功に終わった。 OBコンパよりも楽しいことをやるという対抗心むきだしの企画で少々動機は 不純だが、みなで何かを作り、ワイワイと臨機応変にハプニングに対処しつつ 極上のものを食うのが楽しくないわけがない。人は多いし、 その場でなんだって思いつく。食べ物だってそこらへんの飲み屋で出る食い物など 足元にも及ばないレベルだ。こんな上等な白子やキモなんて食べられやしないし、 さばいて1時間も経っていないような刺身なんてそうそう出してはくれない。 味付けだってみんな各自で皿にとってから醤油で調整するルールだったから 味が薄いなんて文句を言う人もいなかった。メシも16合も炊いたから みんな腹一杯食えたのだ。それだけやって、他大学の人はゲストでお金を徴収しな かったにもかかわらず、一人あたりたった900円前後である。 多めに払ってくれた神のようなOBが数人いらっしゃったのもあるとは言え、 出資総額は16000前後にすぎない。均等に割っても1000円行かないのだ。 酒をバカスカ買っていたら一人あたり2000円以上になっていたかもしれないが、 飲み屋に行けばそんなものでは済むまい。
「こんなおいしいもの一生に一度食べられるかどうかです。 ありがとうございます」
ととあるゲストに言われた時には涙すら出そうになった。 でもそれはそれとして大袈裟すぎだが、いい。 ちなみにその女の子はエクセルサーガのコスプレをして 現れるという強者だったのだが、 まさにエクセルを彷彿とさせる食べっぷり。メシを3杯くらいは食っていたし、 いっときも鍋の側から離れなかったような気がする。 ああ、久しぶりに自分が役に立てた。楽しかった。

2000年11月20日

豆は死んだ。発芽してこないのだ。冬だからだと信じたいが、もう3日目。 明日の朝生えてこなかったら蒸してサラダにして食うことにする。

学園祭で鍋決定。トピック参照のこと。

2000年11月19日

はちみつ。おいしい。鉄だよ鉄。茶に入れると沈殿が落ちるくらい鉄のかたまり。 花粉はミネラルとビタミンのかたまりです。金針菜(百合の花の乾物) なんて特におすすめで、スープにブチこむのが吉。 ただ、あんまりいれるとけっこうエグイかも。

2000年11月17日

ラ・フランス。洋梨。じいちゃんばあちゃんから送ってきたのだが、 うまい。なんだこれ。食感はシャリっともせず、微妙にモニョって感じで 変なのだが、甘みとなによりも香りがたまらない。変な形してて高いから買ったこと がなかったのだが、これはいい。安かったら買う果物リストに加えておこう。 ちなみに筆頭はバナナ。

2000年11月14日

出羽桜。酒の補充をしてきたのだが、これがまたおいしい。 香りがとてもいいのだ。とてもじゃないが料理にブチこむのはもったいない。 NF(京大の学園祭)あたりにもっていってふるまってもいいかもしれない。 その前にいっぺいが飲みつくす気もするが。

今日はバナナ。20本(一房)200円。味は普通で、まあ標準バナナだ。 しかしこの安さはとてつもない。4Kgやそこらはあるのだ。 これだから井上青果店は目が離せない。

2000年11月12日

野菜ジュースにもおいしい温度がある。 4度まで下げると味がわからなくなるし、 ぬるければぬるいでおいしくない上にどんどん品質が下がる。 10度前後(推定)だと冷たいが冷たすぎず、味もよくわかるのだ。 元から味が濃い野菜生活(緑)などなら4度でもおいしいが、 野菜生活(赤)などは味が弱めなので4度まで下げるとおいしくなくなる。 なんでこんなことを書くかというと、 今日は赤が1リットル218円だったからだ。ちょっと冷やし足りないかな というくらいでおどろくほど味がはっきりしておいしかったというだけの話。 クレソンやパセリの香りがちょうどいいくらいにしていていい。

揚げ物はもうダメか。なんか年寄みたい。 しかし、拳法もコンピュータも枯れたのがいいので、だからいいや。

サラダ用の油としていいものを探そう。オリーブ油、キャノーラ油は固すぎる。 冷やすとドロドロしてきてキツくなるのだ。 もっと不飽和度が高くて鎖が短かい脂肪酸が支配的な奴がいい。 そういう奴でそのへんに売ってるのは紅花油であろう。 なお、そういうものは熱や酸素や光をかけるとあっという間に酸化する。 サラダ専用にして必ず冷蔵庫に入れておくのが良い。冷凍ならなお良し。 もっともオリーブ油やキャノーラ油でも遮光と密封だけはすべきだし、 場所があるなら冷蔵しておきたい。酸化しにくいだけでしないわけではないからだ。

油の再利用を勧める人は、 最近は精製技術が上がったので酸化しにくくなっていると言うが、 酸化されやすいのは油である限り避けられぬ宿命である。 精製がどうとかいうのはまるで関係ない。 油は熱すれば確実に酸化される物なのだ。 そして酸化された油は程度はどうあれ確実に体には悪い。 ガンの有力な原因となる。 そういうことで、値段と健康リスクのトレードオフで考えてほしい。 なお、オレはなにより面倒くさいので再利用はしない。 というか、そもそも揚げ物は作らない。 あんな面倒な料理法は家庭でやるもんではなかろう。

そういう観点からすると、 油を熱する料理はことごとく体にはあまりよろしくないことになる。 魚を焼くのも肉を焼くのも同様で、煮るのすら避けたいわけだ。 しかし、そんなことは言っていられない。生で食えないもんも食わねば 効率が悪すぎるだろう。 それに体には許容範囲というものがあって、 ある程度まではダメージをゼロに近く抑えられる機構があるので、 そのある程度以上さえとらないように気をつければそれでいいのだ。 加熱は必要最小限に、油も必要最小限に、ということさえ気をつければいい。

冷蔵庫に場所がなくてやむを得ず出しておいてキャノーラ油が黄色っぽくなっている。 臭いもヤバい。捨てよう。オリーブ油は臭いも色も元からキツいのでわからないが、 まだ大丈夫に違いない。こんな高い油は捨てられん。

というわけで常備する油はピュアオリーブオイルと、紅花油でいいという結論。 エクストラバージンは臭いがキツくて使える範囲が狭い。 ピュアなら炒め物に使っても気にならない範囲だ。 あとはサラダ用に紅花油があれば完璧。

2000年11月11日

「納豆に、ねぎを刻むと、うまいんだ」と歌われるほど納豆にはねぎが いいのだが、それはともかくとして包丁が良く切れる。 かわはぎの骨を切断する時に刃こぼれしてしまったので 研ぎ直したのだが、これがまた見事に切れるようになった。 最初やった時はまるで切れない物体に生まれ変わってしまってかなりあせったのだが、 包丁サイトで正しい研ぎ方を調べてからちゃんとやったところ また切れるようになったのである。ただ、荒研ぎと中研ぎしかしていないので、 見栄えはえらく悪くなった。実用上問題はないが、気分のために今度仕上研ぎも 買ってこようと思う。で、あまりにうれしさに大量にねぎを刻んでしまい、 納豆にねぎを刻みすぎて途方に暮れている次第である。

ところで、固いものを両断する時には中華包丁を使おう。研げばいいとは言え あの包丁でそういう無茶をするのは恐れ多い。かといって例の中華包丁も 6000円しているのでそう安いわけでもないのだが、 奴は頑丈だし錆びないし、 よほどひどい扱いをしても文句は言わないおおらかな奴なのだ。 もう予想はついたと思うが、これからの愛称は髭。 でも明日には忘れていると思う。

せっかくだから中華包丁も研いてみた。買ってもう3年くらい経つ気がするが、 研ぐのは初めてである。で、研いだ結果刃こぼれもだいたいなくなり、 かなりまともに切れるようになった。鉄がやわらかいのかさすがに 和包丁ほどの切れ味はないが、十分に使えるくらい切れる。 刃物は研げば切れるのだ。ただし、研いだ後の切れ味は結局鉄の質に左右される。 一般にステンレスはハガネに比べるとやわらかいようだが、 最近はかなり固いのも出回っているようだ。この中華包丁も ヴァナジウム鋼というステンレスだが、そこそこ固く良く切れる。 ハガネ製の中華包丁はさぞやよく切れるのだろうが、 あれは2万くらいはするので到底買えない。 ブっ叩いて使うものでそんなに高いものを買うのは少々恐れ多いだろう。

さて、残る刃物はかつおぶし用かんな。やってみよう。 とやってみたら、かなり切れるようになった。 ただ台が安物なので使い勝手が悪いことに変わりはないので いずれリッチになったら買い替えようとは思う。 さて、それじゃあ味噌汁でも飲むか。具はネギ。

ところで、このかつおぶしはかなりの確率で荒節である。 京都人は荒節を好むという話をどこかで見たし、 カビは生えてないし、乾燥が甘いのかやけに崩れる。 ダシも前買った奴と微妙に違って妙に荒々しい。 というわけで次は通販で仕上節を買おう。 あっちの方がまろやかで好みだしそもそも安い。 しかし、荒節でこの値段(300g2600円)というのは 最高級の仕上節であの値段(100g450円。300gで1350円)というのを考えると かなりやられた気分になる。無知はイヤなものだ。

2000年11月10日

かわはぎ2。今度は前犯したミスをほとんど犯さずに済んだ。 第一に鮮度が前よりはよかった。昨日買う予定だったものだから 一日経っているのは確かだが、値段と物から考えて前よりは数段いい。 前のはおそらく死後2日以上経過していたと思われる。 さて調理だが、まず皮をはぎ、次に腹を開けて肝臓を無傷で取り出すことに成功。 臓器移植でもやっているような気分だ。その次に頭ごと内臓を袋に入れ、 これを冷凍。火曜にはゴミ。そして残りを身をはぎ、冷蔵。 まな板は十分に洗って乾燥させてあったので変な臭いがつくこともない。 残ったアラは よく洗った鍋で、強火で煮つつアクを完全にとり、塩、酒で調味。 完璧だ。今日はネギまである。完璧だ。ところで、ネギを切るのに あの包丁を使ったところ、不気味なほど抵抗がなく、サクっと切れた。 切れる。切れすぎる。 それでもちょっと切れ味が落ちてきたので、後で研いでおこう。

それにしてもまだまだ魚さばきレベルが低い。それ以前に包丁の扱いに慣れて いない。大雑把な料理しかしてこなかったことがモロにたたっている。 味つけももっと繊細な域に達しなくてはならぬわい。

2000年11月9日

いっぺいとかわはぎを食おうと思ったら、スーパーが魚をしまってしまっていた。 仕方ないので天一を食いにいこうと思ったら、途中の王将で餃子100円セール中だった。 吸いこまれるように王将決定。で、注文だが、餃子とライス。 いっぺいが餃子4人分と言うので、てっきりオレの分も入っているのかと思って、 ついオレもそれでいいよと言ってしまったのだが、一人で4つという意味だった。 仕方ないので頼んだが、到底食い切れない。いっぺいに3つほど食ってもらって 21個。もう餃子は10個以上食わない。

2000年11月2日

バナナ日。今日は1キロ以上のバナナを食ってしまった。 たまたま通ったスーパーでいいバナナが安かったのが2度あったのである。 なお、いいバナナとは、熟れたバナナである。 少しでも青い部分があるバナナは例え台湾バナナであってもおいしくない。 逆にちらほら黒い部分が出てきているバナナであれば どんな品種であってもある程度は甘くて香りも強くおいしい。 新鮮ならうまいとは限らないのが果物なのである。 だからバナナを食うならむしろ黒くなってきて「おつとめ品」とかいって 安売りしているほうがおいしいことが多い。

いもサラダ。作り方は簡単。まずたわしで洗う。土は落とすべきだが、 皮を傷つけてはならない。多少黒っぽくても皮がむけてしまうよりはいい。 どうせゆでれば殺菌されるし、皮は後で簡単に剥けるのである。 次にゆでる。火は湯の温度を保てるギリギリの弱火がいい。 ふたも閉める。なお、蒸せるならその方が良い。 さて、この間に酢と脂をまぜたものを用意しておく。 酢は玄米酢、りんご酢、黒酢などのまともなものでないとおいしくないので、 注意。また、油はキャノーラ油がいい。下手にゴージャスにオリーブ油なんかを 使うと香りがぶつかりあってひどい目にあうのだ。特に米系の酢にオリーブオイルを 合わせるとえらいことになる。比率は酢:油=1:3くらいでいいだろう。 さて、イモは多少力を入れれば箸が貫通するくらいで出す。 だいたい25分くらいか。 そして出したら即座にスライスし、切るはしから酢油にブチこむ。 皮が気にならなければ皮ごとたたき切ってブチこんでもいい。 さて、これでできあがりである。ふたつきの容器に入れておけば 冷蔵庫で1週間は保つ。最大限にイモの味が楽しめる料理法であり、 皮をむかずにゆでるために味も栄養も逃げない。 ビタミンCやミネラルがとり放題である。 なお、皮を剥いてからゆでるとビタミンCやミネラルはほど全量消えてなくなり、 味もなくなる。汁を飲む料理でない限りは皮をむかないようにしよう。 これは他の野菜でも同じであり、切ってからゆでるのは愚の骨頂なのだ。

はちみつりんご酢に対抗して、はちみつ玄米酢を作ってみた。 普通においしい。後味が米なのも気にならず、むしろさわやかだ。

2000年11月1日

カワハギ480円。しかしいくつもの失敗を犯したために かなり残念な結果になってしまった。 第一に鮮度。しかしこれは仕方ない。どんな魚か見るためということで スーパーで買ったのである。次にさばき方。 とにかく薄っぺらい魚なので、どうさばいていいか途方にくれてしまったのである。 とりあえず頭を落としてみようとしたが、それが間違いだった。 かなり前の方に肝臓があり、これを真っぷたつにしてしまったのである。 同時に胆嚢を破ってしまい、黄色い汁をブチまけてしまった。 せっかくの肝を洗わないと苦くて食べられない物体にしてまったのである。 そして、せっかくだからとアラで例のごとく吸い物を作ろうとしたのだが、 使った鍋がマズかった。たっぷりとにんにくと玉葱とカレー粉を使った カレーの直後だったのである。あれはちょっとくらい洗っても匂いが落ちない。 そのために妙にカレーとにんにく臭い汁になってしまった。 加えてひれや皮といった入れるべきでないものまで入れ、 さらに強火のままかなりの時間煮てしまったため、 いらないものまで出てきて味が苦くなってしまっている。 ブチまけた胆汁の影響もあるだろう。味噌でごまかすも及ばず、 なにやらにんにくくさくて苦い汁。失敗。 とりあえずかわはぎのダシは淡白で微弱なので、 これで野菜を煮るなんてのは無理だろう、ということだけはわかった。 また、刺身の方も無事ではない。匂いがするのだ。 それほど気になる匂いではないが、 これが鮮度が落ちたせいかと疑い始めると気分が悪い。 しかしちゃんと食えるだけマシだろう。淡白な味で、肉に弾力がある。 鮮度がよければさぞやおいしいことと思う。 ちなみに、肝はおいしかった。胆汁を落とすためかなり洗い、 加えて鮮度の不安を拭うべく湯に通した後なので相当味が落ちているはずだが、 それでもなかなか良い。前食ったあんこうほどではないが、 鮮度が良く、調理が適切ならば十分並び得る味である。 ところで、この魚は驚くほどあんこうに似ている。 骨の質、肉の弾力、色、ダシの感じ、肝の味、変な顔。 親戚だろうか。 というわけで気にいったので次は市場で調達してこよう。

魚の食い方の基本は、刺身+アラ煮である。白身系は鮮度が良ければ肝も さっとゆでて食える。卵も白子も食える。 鮮度が良ければ頭までアラ煮に使える。 ダシの強い魚なら大根や里芋を一緒に煮るとおいしい。 というわけで、この食い方が一番無駄がない。油溶性の物質は 刺身でとり、水溶性の物質はアラ煮で根こそぎ取る。骨のカルシウム などもある程度溶け出してくるため、ミネラルも豊富にとれる。 目玉や軟骨が食える魚なら多糖類もとれる。 魚の種類によって微妙にやり方を変える必要はあるが、 基本は完全に一緒であり、その割に味は魚によって大部違うので 飽きがこない。なんとも効率的な料理法なのである。 しかし、さすがに刺身ばかりも飽きるし、 たまには鮮度を見誤ってしまうこともある。 なにより、小さい魚をいちいちさばくのは面倒だ。 そういう時は焼くか煮るかである。 煮る時には酒と醤油さえあればいい。好みで生姜などを入れてもいいし、 醤油のかわりに味噌を使ってもいいだろう。 最小限の水と最小限の加熱時間でまとめられればおいしい煮魚になる。 焼くのはもっと簡単だが、 焼いておいしい魚はけっこう限られるので注意が必要だが、 いわしやあゆなどは 鮮度が良ければ丸ごと焼いて頭から内臓ごと食えるので、すばらしく良い。

ところで、生きる上では魚はそんなに必要なものではない。 魚から取るのはタンパクと脂とミネラル類だが、 あくまで穀物と野菜で足りない分を補なう程度の重要度である。 メインは野菜と穀物なのだ。 今100歳とかいう人達はそういうもんばっか食ってて こんな長寿なのであって、その子の世代が親より早く亡くなることも多い。 ここ数十年、日本人の栄養状態はひたすら悪化してきている。 タンパクだ脂だと言って、肉やら乳製品やら卵やらを食いすぎた結果が アレルギーやらアトピーやら成人病やらなのだ。 80年生きたければ穀物と野菜を食うことである。 赤、緑、黄色なんていうよくわからん分類に惑わされず、 はっぱと根っこと実を食えばそれで人間は生きられるのである。 肉や魚でとれる栄養は全て 葉っぱと根っこと実とそれらの発酵食品でとれるのだ。 肉食って元気になるという幻想はそろそろ捨てていい。 昔の人の恐るべき強靭さを思い起こすべきだろう。

そういえばそろろこたつの季節である。そして、こたつといえば当然納豆だろう。 大豆を効果的に消費する最強の手段である。前の冬にはついに納豆化の真髄を 会得することはできなかったが、今度こそである。 生物学の実験で培った微生物の取り扱いスキルを今こそ活かす時である。 キロ単位で作って小分けして冷凍しておけば、それはもうえんえんと 納豆が食えるのだ。栄養だけ言ったら芽を出させたのを 蒸して食った方がいいのだが、あれは圧倒的に保存が効かない。 半日で異臭を放つようなものを常食にするのはむつかしかろう。


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