必須栄養素シリーズ4-ミネラル

ミネラルとは鉱物の意味で、つまり金属などの無機物質である。 これは当然合成できるものではないので、体から出ていく分だけは 補充しなくてはならない。ここでは必須なミネラル全般について 書いてみる。

ミネラルの種類

ミネラルと言われている必須無機物質の種類はかなり多い。 また、どういう形態で摂取するかによって吸収率が大きく変わるため、 たとえば鉄鍋を使えば鉄は不足しない、といった中途半端な知識が どれだけ使えるかはなかなかむつかしいところである。 とりあえず以下にミネラルを表にしてみよう。 以下にミネラルの種類と役割について軽く述べる。

カルシウム
イオンバランスを保つのに絶対的に必要であり、同時に骨 の構造材でもある。イオンバランスが保てなくなるくらいカルシウムが不足すると 骨を分解してこれに当てるため、骨がどんどんもろくなる。 牛乳、骨を食べることによって効率的な補充が可能。
リン
体中どこでも必要な元素である。ただし、とりすぎるとカルシウムの吸収を 妨げるため、コーラなどリン酸が多く含まれるものをとりすぎると カルシウムの欠乏を招く。
マグネシウム
イオンバランスを保つのに必要な他、酵素の部品としても重要である。 従って欠乏すれば全体的に機能が低下してくる。 豆や野菜をたくさん食べていれば不足することはない。
ナトリウム
イオンバランスを保つのに必要である。主に食塩から取るわけだが、 現代人は概してとりすぎなため、抑えることを考えた方が良い。 食塩にして一日10グラム以下に抑えるべきである。 なお、必要量はせいぜい2グラムやそこらだ。 ちなみに、ある高地の民族は一日数十ミリグラムの摂取で健康に生きている。 ただしこれは腎臓の機能が並外れて高いからであり、 現代人にこれを強いるのは間違いである。
塩素
イオンバランスを保つのに必要であり、胃酸の主成分でもある。 不足すれば消化系に重大な障害を及ぼすが、食塩をとりすぎなこのご時世において 不足することはまずない。塩は減らそう。
カリウム
イオンバランスを保つのに必要であり、人体で最も高濃度にあるイオンである。 よって、それだけ大量にとらねばならない。 ナトリウムの倍程度の量が必要であり、野菜や果物を多くとる必要がある。 不足するとまず味覚が鈍くなってくることが知られている。 加工食品に慣れた現代人は加工の過程でカリウムがほとんど流れてしまうために 慢性的な欠乏状態にある。
血の成分であるヘモグロビンを初めとする多くの酵素に必要である。 よって欠乏すると全体的に機能が低下する。血液、肝臓、筋肉等は 鉄の宝庫であり、動物から吸収することが望ましい。 野菜や果物でも加工度を低く保てば不足せずに済む。 また、ビタミンCと同時にあると吸収が良くなることも知られている。 なお、鉄が欠乏すると似たようなイオンを積極的に吸収しようとして 鉛、カドミウム等の有害元素の吸収が増える。
亜鉛
酵素の活性に広く必要であり、欠乏すれば全体的に機能が低下する。 成長阻害、免疫低下、皮膚病、骨格異常、生殖機能障害などなど いくらでも障害が沸いてくるため、欠乏させたくないものだ。 肉や貝に多く含まれるが、精製していない穀物にも多い。ただし、 植物中にはこの吸収を阻害するものが多くあるため、肉食も勧められる。 なお、肉と言っても陸上動物に限らず、魚や貝の方が他の要素を考えると良い。
代謝に関係する酵素の重要な部品である。欠乏すれば代謝のレベルが低下する。 また、活性酸素防御に関係する酵素の中にも銅を部品とするものがあり、 欠乏は老化を早める可能性がある。 貝や、木の実、豆などの種が高率に含んでいる。精製前の穀物にも多い。
セレン
酸化に関係する酵素の部品として知られている。 よって欠乏は老化を早める可能性がある。 欠乏症として心筋障害が知られているが、まだ解明はされていない。 陸上動物の内臓や魚には高濃度で存在しており、精製前の穀物にもそこそこ多い。
フッ素
虫歯の抑制に関わっている。国によっては水道水にフッ素を添加しているが、 日本では行われていない。
マンガン
働きはまだそれほど明らかではないが、欠乏すると成長阻害、運動能力低下、 生殖機能障害などが起きることはよく知られている。 木の実などの種に多く含まれている。
クロム
糖の分解に関与している可能性がある。木の実などの種に多い。
ヨウ素
甲状腺ホルモンの部品として重要。よって欠乏すればホルモンバランスが狂 うことになる。これが欠乏した地域では知恵遅れが起こりやすく、 発育も阻害される。洪水がよく起こる地域で多いようだ。 海草には多く含まれているが、日本人にとってはそこら中にあるもので。 まず不足はしないと思っていい。

さて

細かいことをダラダラと書いてきたが、要は人体にはたくさんのミネラルが必要 だということを示したかっただけである。実際に問題になるミネラルは 限られるわけで、欠乏しているのがカルシウム、マグネシウム、カリウム、鉄、 亜鉛。多すぎることがあるのがリン。明かに多すぎているのがナトリウムである。

カルシウムをとるには牛乳を飲むのが一番てっとり早い。 飲みすぎれば当然脂肪のとりすぎになるわけだが、 一般にコップ一杯毎日飲んでいればカルシウムは足りることになる。 深刻なのは、マグネシウム、カリウムだ。 これらは野菜や果物を食べる以外に手はない。 ただしこれらは水に溶けだすため、加工は最小限に抑えなければならない。 煮るなら煮汁も全部飲むべきだし、切ってから洗うなどもってのほかである。 リンのとりすぎについてはコーラなどの化学ジュースだけに気をつければ良い。 ナトリウムは放っておいても入ってくるやっかいなものだが、 味の濃いものは避け、自分で味付けをする時には最小限にする。 アミノ酸がよく溶けだしたもの(ダシが効いた、の意)ならば 塩をほとんど入れなくても味が整うはずなので、そのあたりを研究するとなお良い。 あと鉄と亜鉛については動物から取るのがいいのだが、 できれば魚か貝から取りたい。肉で十分量をとろうとすると飽和脂肪を とりすぎることになるからである。

なお、楽をしてかなりの効果が望めるのが精製していない穀物を主食とすることだ。 玄米を主食とするだけで、銅、亜鉛、マグネシウムなどの ミネラルをかなりの量とることができる。精米してしまった米には どれもほぼゼロなので、どうにか白米だけは避けたい。 現代においてカロリーが他の栄養素に対して過剰になる最大の原因は 白米である。江戸時代から白米が病気の元であることは広く知られてきたのだが、 それでも人は白米を選んできた。貧しい中にあっても、 敢えて白米を選んで死に近づくことを選んできたわけで、この根は深い。 大黒屋光太夫も漂流してロシアに流される際に、玄米を白米にしてから 食っていたために深刻なビタミン、ミネラル不足にさいなまれたのである。 しかし、このようなことが明らかになった今 そろそろその悪癖を改めても良いころだ。 最低でも胚芽米を用いればいくらかは改善ができるが、 できるならば三分づきにするのが良い。 それを拒み、さらに野菜を食うことを拒むならば、 もはや栄養剤以外に手はないのである。


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