2013/12/12現在の私の見解は異なります。太る原因は炭水化物ですし、動物脂肪の害は問題にはなりません。必須脂肪酸であってもリノール酸は過剰になりがちであり、実質有害でしょう。
油は人間な必要な栄養素の一つだが、 一般にはあまり歓迎されない。 それは、太るからである。 油は最強のエネルギー源でありこんなにいいものはないのだが、 現代はカロリーがあり余る時代であり、 できるだけ少ないカロリーでいかに必要な栄養素をとるかの方が はるかに問題となる。つまり、カロリーは栄養とはみなさない方が 妥当というとんでもない社会に我々は生きているのだ。 さて、ここではその観点から油についてまとめてみよう。
必要である。しかし、全てというわけではない。 なぜなら油にもいろいろと種類があるからだ。 必要なのはそのうちのごく一部なのである。 それを語るにはまず油とは何なのかを語らねばなるまい。
油とは、グリセリンというアルコールに、 脂肪酸というものが3つくっついたものである。 グリセリンはグリセリンだが、脂肪酸は脂肪酸の一言で済まされるものではない。 実に多くの種類があるからだ。そして、人体にはその多くの脂肪酸のうちの 一部がどうしても必要なのである。
脂肪酸とは、炭素が長くつながった鎖状の化合物だ。短いもので10個、 長いものでは20個以上つながっている。 脂肪酸の分類はまずこの長さで行われるわけだ。そして、その炭素各々に水素が くっついている。しかし、一部その水素がつくべきところについていない場合がある。 そういう個所が何か所あるかが 脂肪酸の分類の第二のポイントだ。つまり、長さがいくつで、 何か所水素が欠けているか(正確にはどこで欠けているかも)。 これが脂肪酸の分類の全てである。 長いほど、また水素が欠けている場所が少ないほど油は ドロドロする。たとえば動物の脂は室温では固体だが、植物油は液体である。 植物油の中にも冷やすと固まるものから冷してもサラサラしているものまである。 この違いはその2つの要素によって決まっているわけだ。 全く水素が欠けていない脂肪酸を飽和脂肪酸、 水素が欠けている場所がある脂肪酸を不飽和脂肪酸と言う。 以下にその特徴を表にしておこう。
名前 | 長さ | 水素がない場所の数 |
---|---|---|
ステアリン酸 | 18 | 0 |
パルミチン酸 | 16 | 0 |
ミリスチン酸 | 14 | 0 |
ラウリン酸 | 12 | 0 |
オレイン酸 | 18 | 1 |
リノール酸 | 18 | 2 |
リノレン酸 | 18 | 3 |
イサペンタエン酸(EPA) | 20 | 5 |
ドコサヘキサエン酸(DHA) | 22 | 6 |
人体は水素が欠けていない脂肪酸は自分で作ることができる。 つまり食べる必要がない。また、一箇所だけ欠けているものも 作ることができる。つまり、ステアリン酸からオレイン酸までは 食べる必要がない。というわけでここまでは忘れてくれて良いものだ。 しかし、問題はここより下の2個所以上水素が欠けているもので、 これらは人は自分で作ることができない。だからどうにかして食べなくてはならない。 しかし前に書いたように、油そのものはカロリーが 大きいのでできるだけ取りたくないわけだ。 どんな種類の油にもこれらはある程度含まれているからたくさん取れば 欠乏することはないのだが、できるだけ少ないカロリーで必要なものを取ろうとする ならば取る油の種類には気を使わねばならない。
しかし、ここでまた一つやっかいな要素がある。 それは酸化安定性だ。油が放っておくと固くなってコビリついてくる のは皆知っていることだが、あれは酸素が結合することによって起こる。 黄色くなって固くなり、加えてイヤな臭いを出すわけだが、あれは人体には毒である。 酸素が付加した油は過酸化脂質といい、今流行りの活性酸素そのものだ。 細胞に入ると細胞の壁を作っている脂肪酸を次々と酸化して破壊し、 内部のタンパク質や酵素の構造を破壊して機能を止め、 さらには遺伝子まで傷をつける。ある程度は防御機構があるとは言え、 過剰に過酸化油を体に入れるのはどうにか避けたいところだろう。 では、どういう油が酸化に強いのかと言うと、 これが栄養的に必要なものとは全く逆に、飽和しているほど強いのである。 酸素は不飽和部分にまずくっつくので、飽和していればほとんど酸化されないのだ。
さて、そういうことがわかったところで、 どんな種類の油に以上のうちのどれがどれだけ含まれているかを 下に表にしてみよう(数値は%)。 なお、以下では水素が欠けた個所を不飽和数と言い、 これが0、1、2、3以上の4つで分類する。0と1は人体には必要ないものだと 思っていただけば良い。
油の種類 | 0 | 1 | 2 | 3以上 |
---|---|---|---|---|
キャノーラ油(なたね油) | 6 | 62 | 22 | 10 |
オリーブ油 | 16 | 71 | 10 | 1 |
サフラワー油(紅花油) | 9 | 14 | 76 | 0.5 |
大豆油 | 14 | 25 | 54 | 7 |
綿実油 | 25 | 19 | 54 | 1 |
コーン油(とうもろこし油) | 16 | 24 | 54 | 1 |
フラックス油(亜麻仁油) | 9 | 21 | 16 | 54 |
牛の脂 | 51 | 42 | 2 | 1 |
豚の脂 | 39 | 48 | 10 | 1 |
鷄の脂 | 31 | 48 | 19 | 1 |
魚(ニシン) | 28 | 23 | 4 | 44 |
ここで特に重要なのは、動物性のものは0と1の割合が高いということだ。 特に陸上動物の脂は0の割合が高い。そのために非常にドロドロしており、 多くは室温で固体である。 一方魚の脂は0の率が高い以上に3以上の割合が非常に高く、 結果室温ではかなりの部分が液体である。 また、植物油を見ていくと、特徴的なのが キャノーラ油、大豆油、フラックス油などで、これらは2、3の脂肪酸を 両方ともある程度の率で含んでいる。よって、これだけを脂肪酸源としても 欠乏を起こさない。しかし、オリーブ油、サフラワー油、綿実油、コーン油などは 3の割合が低く、これだけを脂肪酸源とした場合には3の欠乏症を 招くことが知られている。
しかし、逆の見方をすれば、陸上動物の油は不飽和度が低く、 酸化されにくいわけで、一方植物油はあれよあれよと言う間に酸化される。 フラックス油などはとにかく酸化されやすい油であり、 実際賞味期限は非常に短く設定されている。
基本的に全カロリーのうち5%前後は油でとるのが望ましいとされている。 運動をする人は、脂肪をある程度蓄積することで 糖が底を尽くのを遅らせることができるので、 10%程度が適量と言われている。 また、ある種の格闘技をする人にとっては保護の意味もあるし、 水泳などをする人にとっては保温の役目もあるため、 いくらか多めに摂取することが望ましい場合もある。 しかし肉は10%などはるかに超えた率で油を含んでいるわけで、 それを考えれば10%前後を取るというよりも、 10%に抑えるといった方が実状には合っている。 なおその10%の内訳は、2の区分に属するリノール酸が8%前後、 リノレン酸を含む3区分の油が2%前後だ。 肉だけで油のカロリーをとった場合、確実に3が不足する。 そして3が足りるくらい肉を食えばカロリーが過剰になる。 計算してもらえばわかるが、肉というのは理想的な割合で油をとるためには 至極使えない物体なのだ。できるだけ魚か植物油、あるいは自然に分離されない形 でとるのが望ましい。米や豆、アボガドなどの果物も けっこう脂肪は含まれているものなのである。
油は時間とともに酸化される。これはゼロにすることはできない。 しかし、この速度を遅らせることはできる。そのために必要なのは、
この三つである。温度が高いほど酸素はつき、光を浴びれば酸素はつき、 当然酸素があればあるほど酸素はつく。だからこの3つは可能な限り 遮断する必要があるわけだ。どのような油であっても室温で、光のあたる所に 開けっぱなしで置いておけば必ずすぐにダメになる。 気にせず食ってもいいが、体には確実に悪いのだ。 だから、油はできれば冷蔵庫にふたを閉めた状態で保存したい。 これをするだけでも大部油の酸化は止めることができる。 ちなみに、肉や魚そして野菜や穀物も油を含んでいるわけで、 それらもそのように保存するのが望ましい。 たとえば精米した米は酸素にモロに触れているため、 中に含まれる油はあっと言う間に酸化される。 古い米がマズいのはその原因の多くがそれで、同時に体にも悪い。 また、魚の干物も古くなると黄色くなる。これも油の酸化だ。
さて、材料に油が入っている場合はともかくとして、 精製した油を料理に使う場合というのはどういう場合かを考えてみよう。 まず一つは水溶性の栄養が流れ去るのを防ぐバリヤーとしてで、 もう一つは加熱の際の温度伝達の媒体としてだろう。 前者はつまりサラダのドレッシングであり、 後者は揚げものと炒めものと焼きものである。
前者はたとえばジャガイモをゆでた後に油に和えて味が抜けないようにする 用途であるわけだが、この場合は加熱はしない。加熱をしないのであれば 不飽和脂肪酸をとるのに絶好の機会になるわけで、できるだけ それらが多く含まれたものを取るのがいいことになる。 また、冷やして食べることが多いので、あまりドロドロした油では 食感が重くなる。そこで不飽和度が高くサラサラした油ほど良い。 それらから言うと、 この用途ではフラックス油が最も適していると言えるだろう。 しかし、賞味期限が異様に短かく、保存も冷凍庫、 さらに精製過程で酸化されないようにするための工夫が大変で値段がとてつもなく 高く、よほどの健康マニアでない限りおすすめはしない。 よってこの用途で最強なのは大豆油である。 2、3の油がそこそこの割合で含まれ、値段も安い。 なお、魚をよく食べるなら3の油は足りているので、 もっとサラサラしたサフラワー油(紅花油)も良い。
次に加熱用だが、これには酸化を防ぐためできるだけ不飽和度の低いものを 使う必要がある。 熱い状態で食べるから冷めた状態で多少ドロドロしていても気にならない。 そういうことから動物性脂肪がいいと思われるのだが、 それは早合点だ。なぜなら、食べてからの影響のことを考えていないからである。 0の区分の油は室温でたいがい固体であり、ということは血管の中でも固体に近い ということだ。カロリーになるだけならともかく、 血管の疾患の原因になるようなものを積極的に食べるのはよくない。 肉は食べたくなるもので仕方ないが、調理用の油にまでそんなものを使うのは 無駄というものだろう。となると、1の区分のものが次善の策として有用になる。 つまりキャノーラ油、オリーブ油だ。これらは不飽和度が低く、 熱にも強い。特にオリーブ油は最強と言ってもいいくらいだ。 ただオリーブ油は香りが強いので、二番絞りであるピュアオリーブ油を 用いる方がいろいろ使えて良いし、加えて安い。 それでも高いと思うならキャノーラ油が安くて適している。 サラダにもなんとか使える油であり、万能と言えるだろう。 なお、加熱用の酸化されにくい油であっても、加熱は酸化を確実に早める。 温度を高くあげすぎず、できるだけ短時間で加熱を終えるのが望ましい。 また、保存は同様に冷蔵庫を使うのが良いだろう。最低でも密封はし、 同時に光を遮断するべきである。
まず肉の脂は害にしかならないということが言える。 しかしながらこれだけ浸透してしまっては止めることもむつかしい。 だから、とりあえず量を減らす。減らしつつ、 リノール酸とリノレン酸を豊富に含む油をとる工夫をする。 具体的には大豆油やキャノーラ油をサラダのドレッシングとして取るか、 魚を食べるかである。 また、分離された油は酸化を避けるためにちゃんと密封して冷蔵庫に入れ、 加熱調理をよくする人はオリーブ油かキャノーラ油を使う。
なお、この油については栄養欠乏よりもカロリーと酸化の方が はるかに恐いことを忘れないでほしい。 無理をして下手に油でリノレン酸(3)やリノール酸(2)をとろうとするくらいなら 肉や油を避けて野菜や豆を食った方がはるかに本道に近いのだ。 くれぐれもそれをお忘れなく。
なお、近頃は高オレイック(オレイン酸が多い)な油が抗酸化力が強いとして 流行っている。リノール酸が多いはずの紅花油やコーン油などでも オレイン酸が高率に含まれるとラベルされているものも多い。 どういうことかはわからないが、 そういうものは上の表にはあてはまらないので注意してほしい。 大筋としてはだが、 揚げものに最適という奴はオレイン酸が多く、 サラダに使えるという奴はリノール酸が多い。 栄養として必要なのはリノール酸であり、酸化に強いのはオレイン酸である ということだけ知っていればいいだろう。
なお、揚げ物は面倒な上にコストも高く、 外で食うにしても体に悪いことは変わりなく、 はっきりいっていいことが何もない。できるだけ避けることを おすすめしておく。