「とらいあんぐるハート」感想(Ver.3)

一度おおまかにプレイした後では印象はかなり最悪でした。 何か気になるものはあったにせよ、それがなんだかわからない程度だったのです。 しかし、とらいあんぐるハート2をプレイした後に もう一度唯子シナリオをやってみたところ、 印象がガラっと変わってかなり評価が高くなっていました。 しかし、さらにその後に小鳥シナリオを見て、 またまたガラっと評価が落ちしました。 ムラがありすぎます。 なお、何が悪いのかをよく考えてみたので、 この文書の最後にネタバレ解析 として詳しく書いておきます。

シナリオ

恋愛物です。が、キャラの設定がすごいのが混ざっているので、話も ただの恋愛物では済まなくまります。 ネタバレを避けるために詳しくは書きませんが、 こんな恥ずかしいネタを今時、それもストレートにやってしまう 人はそう多くはないでしょう。

ただ、そんなことよりも問題なのはテンポです。流れです。 前半は本当に何も起こらず、 「…楽しく話をした」のような通常会話も 多くあり、 シナリオが進まないうちはキャラもあまり魅力が出てきませんので、 本当に退屈なのです。 そうしてやっとこさイベントが起こってもりあがるころになっても、 事の起こりが唐突すぎて困ります。ラブラブになるにしても速すぎます。 伏線というものがまるでありません。 シナリオが不連続すぎるのです。また時間の経過も感じられず、 一日たとうと一週間たとうと全然違いがありません。 シーンを書くことはできるけれども、それをつなげてストーリーにすることは 相当に下手糞な人なのでしょう。

さて、そういうわけでストーリーはがっかりなわけですが、 シーンをバラバラに見ているとけっこう出来がいいこともあります。 なんでもない会話がかなり幸せでよくキャラが出ています。 この人の最大の武器はこのなんでもない日常描写でしょう。 イベントと呼ぶほどのこともないようなささいな出来事が とても強い印象を与えます。 ただ、分量が少ないためにシナリオが確定してそのキャラ一本になるまではかなり かったるいのが残念です。

それと特筆すべき点をひとつ。キャラによっては ラブラブになってからの描写がものすごく、 もう目を覆わんばかりの幸せさを見せつけてくれることです。 お互いにお互いのことをものすごく考えていることがそれはもう 伝わってきます。Hシーンにしても 避妊をする描写がちゃんと書かれているのは私が見た限りこれだけです。 そもそもゲーム的にもHシーンがゴールではなく、 その後にこそシナリオの山場があるというのも 珍しいパターンで、Hがラブラブ状態の表現の一つでしかなく 過程にすぎないという見方は非常に現実感があります。

が、以上のことは「シナリオによっては」です。 シナリオライターは完全に一人というわけではないらしく、 シナリオによってはかなりヒドい展開になります。 無理矢理エロゲーにしようとしてキャラをブチ壊したり、 テンポをブチ壊したり、そんなことが頻繁に起こるのです。 残念の一言です。

文章

おおまかには自然で普通な一人称なのですが、 微妙に言葉のセンスが変です。歩く音が「てぺてぺ」だったりします。 全般に妙に恥ずかしくなるような雰囲気で かゆいシナリオという言葉がしっくり来ます。 これが最大のウリと言えるでしょう。

人物

キャラ設定を書くこと自体がネタバレになるようなキャラが数人いますので 詳しく書くのは控えますが、半分は普通、半分はネタです。 普通なのにしても大女・小女みたいにわかりやすく極端にしてますし、 普通じゃないのになると忍者なんてのまで出てきます。 加えて残念ながら少しあざとい小道具を使いすぎた気もします。 声優の演技の影響もあるでしょうが、口調がやりすぎなキャラ が数人います。しかし、話しているうちに そういう外面のあざとさをひとまず置いて 見ることができるようになります。そうなったらしめたもの。 もともと人格がよく練られているので けっこう魅力的に思えるようになるのです。 しかし、やはり最初からそういう引くような要素は排除しておけばよかった 思います。「はやや〜」とか言わなくても十分魅力的なのですから。 シナリオライタが善良な人な場合はこういうあざとい小道具はかえって マイナスです。同じくあざといのでも、To Heartのようにシナリオライタ がネタ人間で、お約束で楽しむような人だった場合は描写から 「ネタだ」ということがわかるのでさほど気になりません。 マルチが「はわわ〜」とか言うのもネタなのは一目瞭然でしょう。 しかし、 こういう真面目に書く人がやるとマジでやってるような印象を受けてしまって かえって引く気がします。

しかしながら、そういうキャラの良さもなんでもない日常描写の時の話です。 シナリオ的な要請でそれがブチこわしにされたり、 無理矢理エロゲにしようとしてブチ壊しにしたりということが これまた頻繁に起こります。 いらないことをしないで一番得意なことで勝負すればいいのにと 本当に残念になります。

なお、主人公のタイプはめずらしい部類です。 チビ(161センチ)で顔が女みたいでそれを気にして不良っぽい格好をしている、 などというタイプは今までに見たことはありません。 性格にもこのシナリオライターの自然な感性がよく現れています。

ルール

選択肢つき小説。どこにどのキャラがいるのかわかるので攻略は容易です。 いらないことに時間を食う心配はしなくていいでしょう。 読んだところと読んでないところを区別して読んだところだけをスキップする機能が あったらよかったのでしょうが、これだけスキップが遅いとスキップしていても 読めるのでそれほど致命的でもありません。

が、いろいろと変です。元々はパソコン版To Heart同様に 一階、二階、三階などという場所を指定して移動するシステムだったらしく、 その名残が残ってしまっています。 バグも多く、生首になったり背景が出なかったりします。 ちゃんと作りましょう。これでは素人に毛が生えた程度にしか見えません。

普通の絵柄ですが、バランスが妙に狂っていて、 なにかぎこちないです。デッサンがどうとか言う前に 描き慣れていないのではないでしょうか。 気になります。原画の人の絵はこんなに不安定ではなかった気がするのですが。

なお、塗りは普通です。背景も写真なので極めておてがるですが、 それが果たしていいのか悪いのか。私は気にしませんが。

曲は普通。以上。

声ですが、あって困るほどひどくはないが、なくても別に、という感じでしょうか。 元々全セリフしゃべるわけでもありませんし、 そんなにうまい人がいるわけでもありません。 かといって下手糞すぎるわけでもなく、 キャラの特徴同様少々やりすぎな演技が気になる程度です。 まあ、いいかなという感じです。 ただ、圧縮がキツいのかなんなのか音質が非常に悪いのが 無駄にもったいないです。

全体として

いろいろと他とは違う点があっておもしろいし、 キャラの人格はよく出来ているのですが、 基本的には落第です。出来が悪すぎます。 展開のテンポ、ストーリーのネタ、キャラの特徴付け、プログラム、 その他もろもろどれをとっても残念です。 基本的にキャラは大切にされているので そのへんの愛をもっと前面に出しつつ無茶な要素を減らし、 あとはテンポというものを考えてエピソードをはさんでいければ ストーリー的には大化けするでしょう。 あとは完成度です。ちゃんとテストプレイしてバグをとり、 ゴミをとる。これにつきます。 まあ、2へのステップだったと考えればいいのではないでしょうか。


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ネタバレ解析-なぜ前はあんなに印象が悪かったか-

最初やった時は相当に印象が悪いゲームでした。 確かにHシーンがゴールじゃなかったり、 妙に会話がよかったりと気になる要素はいくらでもありましたが、 それをさし引いてもはるかにマイナスになるほど印象が悪かったのです。 以下に考えられる要因を箇条書きにしてみます。

だいたいこんなところでしょうか。一つ一つ見ていきましょう。

1.唯子と小鳥の口調

「はやや」「あやー」「うにゅー」等がかなりの頻度で出ます。 本文にも書いたようにネタでやるなら耐えられるのですが、 どうしてもこの人(シナリオライタ)がやるとマジに見えます。 そのへんが辛いのです。 加えて唯子はあの甘えるような話し方が相当強烈ですし、 小鳥は小鳥で性格があの通り控え目でいい奴すぎます。 声優のおかげでその印象はさらに増幅されており、 最初からあれでは少し引くのも無理はないでしょう。 いうならば最初からラブラブ度が高すぎることに拒否反応を起したのかもしれません。

2.最初のうちのかったるさ

最大に印象が悪いのがいわゆる「通常会話」です。 「〜〜と楽しく話をした」という類の手抜きは、 せっかく会いにいったのに、とかなり気分を害します。 これがTLS(True Love Story)のようなゲームゲームしたものならそれも 気になりませんが、こういう文章ゲーの場合にはかなり致命的に思えます。 加えて最初のうちは誰かと話をしてもかなり短く、 かといってキャラがよく表現されているようなイベントもあまりありません。 最大のウリである「幸せさ」が表現されていないのです。 唯子シナリオで毎日道場をのぞいているころはかなり退屈でしょう。 一方いずみシナリオはキャラの良さもあってそのへんがかなりよくできていますが、 それゆえに後のダメージが大きかったのかもしれません(後述)。

3.いずみシナリオ

忍者の試験を受けるいずみをはげますシナリオなわけですが、 ラブラブになるといずみの口調やら態度が豹変します。 最後には涙ぐましい演技だったということがわかって安心はするのですが、 変わってしばらくはかなり困惑しました。 それに、結局私はあの対等で気のおけない関係が気にいって いたわけで、ああも従属的になられるとがっかりです。 そのあたりでかなり引いてしまいました。 さらに、最後にとってつけたような暗殺者の襲撃。 クライマックスが必要なのは認めますが、 そんな伏線もなにもない展開が許されるでしょうか。 試験に受かって終わりというのがイヤで、そのために暗殺者に勝つという 別の要素を入れたのだとは思いますが、唐突すぎます。 そもそも忍者が社会的に認知されている(国の免許まである) ということについてあまり述べられておらず、 あの世界観自体がよくわからないというのも印象を悪くしていたのかもしれません。

4.さくらシナリオ

ストーリーでがっかりという点ではこれが最強です。 吸血鬼というだけで一歩引いてしまうところに加えて猫耳。 まして発情期。そして超能力に、一族との戦い。 最後は「恨みは忘れないぞ」という悪役の捨てゼリフ。 やりすぎと思わない方がおかしいと私などは思ってしまいます。 普通はここまでやったらネタです。お約束を楽しもうという オーラがバリバリに出ているはずです。 しかしこの人が書くとそういうオーラがまったく出ません。 マジで書いているようにしか思えないのです。 それゆえネタとして受けとることができず、 印象が「陳腐」に固定されてしまったのでしょう。

5.唯子シナリオ

最初やった時には唯子シナリオはフォーチュンリングでひっかかってトゥルーエンド になりませんでした。しかしそれに気づかず次のキャラへ進めていたため、 あの異常なほどラブラブな描写を見ずに終わっていたのです。 あれを見ていればもう少しマシな印象になっていたかもしれません。 が、出来が悪いという根本的な問題は覆い難く、 その唯子シナリオにしてもストーリーから見れば悲惨の一言です。 なぜこうも残念なのでしょう。

つまり

出来が悪かったのです。 また、これは微々たることかもしれませんが、 シナリオライターの態度も印象に影響しています。 都築氏の気質として、To Heartなどなら明らかにネタとしてやっている あざとい口調や、おいしいシチュエイションを、 かなり本気でやってしまうということがあるように思えるのです。 雰囲気で引いたのはそれが原因でしょう。

しかし、氏の長所もまたその気質に由来しているわけで、 そうでなければあれだけのラブラブ描写は到底できません。 高橋氏にはとても無理です。冷静に分析しつつ書いている人では ああはならないのです。だから、都築氏はこれでいいと思います。 ただ、ストーリーそのものがあんまりにあんまりなので、 誰かが監修してあげるべきでしょう。 彼には彼にしかできない彼らしさがあるわけですから それを損うのだけは避けねばなりませんが、 いくらなんでもあの出来ではどうにもなりません。 同人臭さも気になります。 私としては2ですでにかなりいい感じではあるのですが、 まだまだストーリーが残念なことに変わりはありません。

ネタバレ解析2-小鳥シナリオショック-

小鳥シナリオはショックでした。唯子シナリオではさほど目立たなかった ダメさが見事に爆発しています。箇条書きにしてみましょう。

  1. イベントがロクに置きない。
  2. 通常会話が多い。
  3. まだ話が進まないのかと思ったら突然交通事故
  4. 入院中にいらない妄想Hシーン
  5. 告白した瞬間にHシーンに入る無節操さ。
  6. 度々無意味にくり返されるHシーン。
  7. 白昼堂々と行われる台所Hシーン。
  8. とってつけたような中国人友情話

キリがないからこのへんにしましょう。 それにしてもダメです。小鳥はいい奴ですが、 シナリオ的にここまでヒドいとその長所が見事に殺されてしまいます。 唯子シナリオの方がよほど小鳥はかわいいです。

さて、この原因は無理矢理なストーリーと、無理矢理なエロゲー化にあります。 ストーリーですが、 幸せな日常描写にかまけている間に時間がたってしまい、 何か起こさなきゃとあせって交通事故というパターンでしょうか。 それだけでは間がもたず、中国人との別れをなんとか山場にしたてようとしています。 ダメすぎです。 そして無理矢理なエロゲー化は言うまでもなく最悪です。 ジャマです。エロくもなければキャラ描写にもなっていない 劣悪なエロシーンが何回となくくり返されます。 書いている人が違うからだと信じたいところでしょう。 小鳥、いずみ、さくらの3人のシナリオが別人によるものだと考えれば いくらか気も楽になります。唯子のHシーンがあれだけラブラブだったのに、 その3人のHシーンはまるでダメなのです。 瞳や七瀬のは覚えていませんが、そんなに印象が悪かった気はしません。

なにを見ても残念なこの作品ですが、 残念と思うのは私が都築氏のセンスが好きだからでしょう。 キャラも好きですし、会話のセンスも好きですし、 なんといってもこの善良さがたまりません。 だからこそ、その良さを覆い隠してしまうような出来の悪さは なんとしてもとり除いてほしいと思います。

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