「トゥルーラブストーリー2」感想

人気があるのでやってみました。が、なかなかどうしていい作品です。 一撃の破壊力はありませんが、高い完成度を持つ作品だと言えます。 そしてなによりも圧巻なのはその規模です。 CD3枚で、それぞれ「1学期」「2学期」「3学期」というのには参りました。 背景も1800枚あると聞きます。確かに同じイベントの背景でも 学期が違えば背景にいる人の服も違うわけで当然ではありますが、 ちゃんとそれをやるのがいかに大変なことか。 まったく妥協を許さないプロの心が心地よい佳作といえるでしょう。

ストーリー、イベント

突然転校が決まり、残された1ヶ月で思い出を作ろうというのが筋です。 当然思い出といえば恋愛なわけですが。 で、もちろんキャラクターの数だけ筋があるわけですが、 おそろしいのは出会い方によって起こるイベントが変わるために、 一人のキャラクターでも実質的に2つ以上のストーリーを持つということです。 以上というのは、メインキャラ4人に関しては学期によってデートのイベントが 変わってくるためにそれ以上の数とも言えるからで、 さらにおそろしい規模になっています。 確かに大筋では一緒ですが、仲の良い友達として出発するか、 あこがれを抱く存在として出発するかでイベントが変わるというのは とても見事です。

また複数キャラのからみイベントが多いのも好感がもてます。 特に学期限定キャラとメインキャラのからみイベントはレアですので つい探してしまいます。結構いろんな組みあわせがあって、 またもやこのゲームの規模を思い知ることができます。

ただし、シナリオそのものはさほど独創性があるものでも、強力な感情移入効果を もつものでもありません。非常に地味ですし、 大筋の流れにおいては全キャラでそう変わらない上に、 エンディングに至ってはほとんど同じです。 しかし、その地味さゆえに想像力あるいは妄想力が強い人は 勝手にはまっていく危険が高いとも言えます。

登場人物

よくそろえています。そして、ギャルゲーとしての範囲内ではありますが 自然であざとさがあまりありません。一撃の破壊力を持つキャラはいませんが、 かざりけのないできだけに、悪い印象は受けません。 言うならば「じわじわと神経を侵していくタイプ」のキャラクターでしょう。 ムチャをしなくても印象に残るキャラクターを作ることはできるのだという いい見本です。ただ、ハマるにはやはりそういう「想像力(妄想力)」 が必要なので人を選ぶ面はあるでしょうが。

ちなみに幽霊なんてのもいて、結構ムチャなのにも好感がもてます。 究極超人Rを思い出しますね(というかパクリでしょう)。 妹などの非ヒロインキャラがらみのイベントも多く、 単なる脇役に終わっていないのもいいところです。 しかし、妹は1の方が良かったなと思うのは私だけでしょうか。 美形じゃないうえに、なんか普通なのがよかったと思うのですが。 ついでにもうひとつ。犬の名前が「まぐろ」で飼い主の家が寿司屋ってのは おもしろすぎません?私としてはそのまぐろ女がいい感じです。

ルール

これほど凝ったものもないでしょう。 シミュレーションのセンスが並はずれています。 「あこがれ」と「仲良し」の2通りで表現される感情。 いっしょに下校しながらいろいろと話をして、うまくデートなどに誘う 下校会話システム。学期によって違うデート場所や季節限定キャラクター達。 どれをとっても恋愛のシミュレート方法としてとても魅力的です。 ゲームとして面白い数少ないギャルゲーのひとつであり、おそらくその中でも 最高峰の部類に入ります。

また、2ではどこでイベントが起こるかのだいたいのガイドが示されているため、 致命的に重要なイベントを見逃すことが少なくなっています。 イベントも多く、何度も同じことを言われて興覚めということもそうありません。 1にくらべても格段の進歩をしています。

そしてそれらを裏づけるのは圧倒的な分量です。 感情によるイベントの変化も、下校会話のおもしろさも、 すべてが分量によって支えられています。 まったく体力のある会社にしか作れないゲームといえます。

キャラクターはメインが4人、学期ごとの季節キャラが2人づつということで 10人です。そして、それぞれおおまかに2つの感情変化パターンがありますから、 これだけでも最低(4×3×2)+(2×3×2)=36回やらないと 全部は見られません。さらに妹もハッピーエンディングこそないものの一応 のシナリオがあり、当然学期ごとにイベントが異なります。そして隠しキャラの 幽霊もいますから、それこそ膨大な回数をやらないと全てを見ることはできません。 さすがにそこまでやる人もそういないでしょうが、 ちょっと気にいったならばつい15回程度はプレイしてしまうでしょう。 まったくおそろしい、プロの仕事です。そこらへんの同人がかった 会社にはとてもこんなものは作れません。できればみならってほしいものですが。

ゴッツイ絵です。しかし下手ではありません。ポーズやデザインなどは よくそのキャラをあらわしていますし、表情も豊かです。 慣れてしまえばこっちのものでしょう。むしろ、同人臭い小ぎれいな 絵を見せられるよりもずっといい気がします。

そして、絵そのものよりもおそろしいのはその枚数です。 一人あたり最低20枚以上は立ち絵があります。 学期によって服は違いますし、表情や動きも多いためおそらく莫大な量でしょう。 背景も同様です(1800枚とか)。そして、イベントの全画面表示する絵も 一人25枚前後あり、もちろん学期が違えば服が違うわけですから 学期共通のイベントの絵は×3されます。30枚はあるでしょう。 ですから、イベント絵だけでもおそらく300枚近いのではないでしょうか。

印象の強い曲はありません。が、キャラのテーマ曲を聞いた瞬間に どのキャラが出るかがわかるというのは結構できがいいのかもしれません。 なんにせよ、じゃましないという最低の条件はみたしています。

声に関してですが、不満はありません。みなそこそこのレベル以上で、 やはりここでも会社の体力がうかがえます。そして、当然量は莫大です。 なにせこのイベント量でフルボイスなのですから。さらに 主人公の性質を決める画面では、最後にクリアしたキャラの声で、 いろいろとしゃべってくれます。 まったくよくつぼをおさえていると言う他ないでしょう。

全体として

とにかくデカいゲームです。完成度は最高レベルですし、 ボリュームは圧倒的です。そしてゲームとして申し分ないハマリ性があります。 難点は地味なことですが、これは玄人にとっては長所に転換されるでしょう。 私はそこまで想像力豊かにプレイできなかったのでキャラの印象はさほど残っては ないのですが、それでもやけに燃えたゲームでした。ギャルゲーで キャラの印象よりもゲームとしての印象が強かったというのは珍しい経験です。


もどる