「好き好き大好き」感想

ひとことでいえば、ヤなゲームです。 何からなにまで吐き気がします。 嫌悪感。そのレベルは今までで最大級です。 鬼畜系のものはほとんどさわったことはありませんが、 こういうものがゴロゴロしているのであれば、永久に手は出したくありません。 ちなみにすべてのエンディングを見てはいませんが、CGが100%になったので もういいでしょう。

ストーリー

いきなり、主人公が女の子を誘拐してゴムの服を着せてしまって 監禁したところからはじまります。 主人公はその女の子に前から目をつけており、 「きっとゴムの服がにあうだろうなあ」という妄想のもと実際に 誘拐してしまうのです。 そして、話はそれを隠しとおそうとする主人公の病的なまでの怯えと、 女の子を傷つけたくない、女の子に好かれたい、女の子にゴムを理解してほしい、 といった何か矛盾に満ちた異常な精神が話のメインになります。 とにかく、主人公は誰が来ても怯え、勝手にさらっておいたことも忘れて 女の子に嫌われまい嫌われまいと異常なまでの執念をもやすのです。

イヤでしょう。こんなストーリーは。 こんなはじまりかたをする段階で主人公には破滅しかありません。 エンディングは11ありますが、見た範囲(7つ)幸せになるものはありません。 誰かが死ぬとか、別の標的を監禁するだとか、狂気の世界へ行ってしまうだとか、 そんなのばかりです。

とにかく、目のつけどころがすごいのは確かです。 Hシーンもどこまでもイヤで、りっぱに演出になっています。 そして、やはり強姦の嵐。和姦は和姦でも何かおかしく、まったく心が荒みます。 一貫して異常なもの、イヤなものを作ろうとし、 そのためには努力を惜しまない徹底した態度が見てとれるのです。 ストーリー上の不整合もなく、キャラのムチャな人格変化もありません。 ちゃんとできているからこそ、イヤなのです。

文章

文体だけみれば自然体な文章ですが、すごいのは主人公の心理描写です。 とにかく主人公は異常な人間なわけですが、その異常さがとても説得力のある 文章で語られています。たとえば、主人公は自分が誘拐して監禁していることも たなにあげて、食べ物が気にいってもらえなかったらどうしよう、とか、 寒くはないだろうか、とかそんなことばかり考えています。 微妙というか絶妙に思考がおかしいのです。論理的な思考でありながら 何かが欠落している。そんなことを表現できるというのは おそろしいことではないでしょうか。

人物

主人公、つきまとう後輩、幼なじみの女の子。 幼なじみだけれども小さいころは嫌いあっていた女の子。 中学校のころに知りあいだった、大学院生。 このあたりが登場人物です。

全般に非常によく人格が描けていますが、異常者ばかりです。 異常者の密度そのものがおかしいと言えばそうなのですが、 個々の異常者の描写は主人公同様おそろしく丁寧でよくできています。 特に「つきまとう後輩」にいたっては、その異常なまでの主人公への恋心に 恐怖さら感じます。ネタバレもいやなのであまり書きませんが、 このキャラはなにかとすごいエンディングをひきおこします。

ただし、どうも暴走しやすい傾向が度をすぎている気がします。 主人公はあからさまな異常者で何をしてもいいのですが、 他のキャラも何かと唐突に暴走しがちです。暴走のしかたはいろいろですが、 いきなりはだかになってせまってくるようなのはやりすぎではないでしょうか。 しかしながら、他のゲームに見られるものにくらべれば相当自然に無理なく 暴走しており、その出来の良さゆえに余計イヤな気分になります。

ルール

選択肢つき小説です。 文章を読み返せない以外にまったく不満はありません。 設定できることも多いですし、選択肢もムチャなものはありません。 分岐もわかりやすく、 11個のエンディングを見ることもルール的には辛くないでしょう。 速度も並で、苦痛にはなりません。

とりあえず原画がとてつもないです。アクの強い絵です。 角度によっては人間に見えず、角度によってはそこそこかわいくも見えはしますが、 角度によって顔が変わりすぎるので恐い限りです。 変なだけでなく、下手なのは間違いないでしょう。

塗りもいまとなっては低レベルで、フルカラーが無駄に感じられます。 ただ、原画のものすごさの前では塗りの下手さなど問題ではなく、 気にもなりません。

曲が全部ギターです。 曲そのものが明るめであっても統一感あるイヤさが迫ってきます。 雰囲気がよくでていて、徹底した心意気が見えますが、 それは別として辛さが増幅されました。 おそらく狙い通りでしょう。

全体として

イヤです。よくできていて、すごいからこそイヤです。 一応イヤ系だと思っていた「雫」や「MOON.」はなんだかんだ言って、 人間の愛情や暖かさ、青春の日々などが主題にありましたが、 これにはそんなものは微塵もありません。 殺伐として、異常で、ねっとりと暗い。 そんな世界が高い水準の文章で延々とつづられるのです。 出来がいいのは確かです。すごいのも確かです。 意外な展開やエンディングもおもしろいのは確かです。 しかし、イヤでした。


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