「真・女神転生2」(スーパーファミコン)感想

ひとことで言えば、世紀末イカレRPGです。とにかくなにからなにまで異端な ゲームで、マニアしか喜ばないんじゃないかとさえ思えるような 対象を限定したゲームになっています。さあ、それでは個々の要素を見て いきましょう。

ストーリー

前作は世紀末でしたが、こんどは世紀末の後の時代設定となっています。 だいたいの設定はこんな感じです

「20世紀末、ICBMと大洪水によって崩壊した東京は 伝説の悪魔のはびこる混沌の大廃虚と化した。数十年の混沌の時代の後、206X年 ついにメシア教はもとカテドラルのあった場所に巨大なコロニーを建造し、 これによって東京はTOKYOミレニアムとして復興をとげた。 それは巨大なピラミッド状の密閉された空間であり、 もはやその外では人類は生存することはかなわない。 人々は階級にわけられ、そのコロニーの中で悪魔におびえつつも生活していた。 そして、ひとりの記憶喪失の少年が現れる…」

こんな感じです。中のメシア教というのは世紀末に生まれたキリスト教的な 新興宗教で(というかキリスト教そのもの)唯一神を信仰する秩序を重視する団体です。 もうひとつのガイア教は自らの力を信じ、混沌を人の姿と考える人々の団体で、 まあ、仏教や神道系の宗教とも言えます。 両者ははげしく対立しており、そのどちらに主人公がかたむくかによって大きく ストーリーが変わってきます。その数3つ。どれも微妙なずれが原因で 大きなずれへと発展していき、気がつけばまったく別の立場になっているのです。

また世界観としては各地の神や悪魔などの超常の者達が 現実に存在しており、「悪魔」と総称されているわけです。 だから、神だろうと、天使だろうとすべて「悪魔」の一種であることになります。

ストーリーのはじめはミレニアムの中心であるセンターがらみの話ですが、 だんだんと地下へ追いやられたガイア教徒や、土着の国津神と大陸系の 天津神の対立やその対立につけこんだヘブライ系「悪魔」の話になっていきます。 そしてついには地球全体を左右する話へと発展していくのです。 (といってもすでに東京にしか人間はいないようだが)

とにかくイカれたストーリです。とても海外には出せません。 これだけ神様をぞんざいにあつかったストーリーもすくないでしょう。

演出

もちろんイカれています。 しかしながら、何かカッコイイのが特徴で、登場人物のセリフも 嫌に芝居がかっていたり、くだけていたりと非常にに多様です。 とにかく世界観がしっかりしているために、のめりこみやすいタイプの ゲームになっています。絵も音楽もストーリーも完全に演出重視で作られており、 個々のシーンは非常に印象深いものになっています。 RPGの演出としてこのシリーズ以上のものは いまだにお目にかかったことはありません。

登場人物

イカれたのばかりです。イカれた科学者、イカれた狂信者、イカれた悪魔達に イカれた街の人達…。でも、カッコよくイカれているので、なんとも イカしています。特にちらほらでてくるSTEAVENという車いすの 科学者(あからさまにあの人がモデル)はものすごくかっこいいせりふをはきます。 これだけキャラが立っているRPGは私の知る限り 女神転生シリーズだけです。FFやグランディアのキャラなど、この前では 死んでいるも同然に見えます。

ルール

悪魔合体と悪魔との会話によって、他のRPGと決定的な差をきずいています。 つまり、モンスター(ここでは悪魔だが)をただ倒すだけの存在から 会話を楽しむ相手として、あるいは収集する対象として、あるいは 力強い味方としてその価値を飛躍的に高めたのです。 基本的にパーティーの構成要因は主人公とヒロインと悪魔です。 その悪魔はどうするかというと、会話によって仲間にするのですが、 その過程があまりに楽しいのです。「金くれたら仲間になる」といって、 さんざん金をださせたあげく逃げたり襲ってきたりするやつもいれば、 ダンスやいっきのみで勝負して仲間になる奴もいて、とても個性豊かです。 さらに、仲間にした悪魔は複数を合体させて、さらに強い悪魔にする (組み合わせによってはショボくなるが)ことができ、 材料ほしさに悪魔をダマくらかしてつれてくるという非常にあくどい作業が なんべんとなくくりかえかえされることになります。 まったく斬新なルールです。

と、せっかくここまでほめちぎってきたのですが、これ以外はダメです。 とにかくバランスが悪すぎます。そしてボス戦の定跡がはっきりしすぎています。 レベルが上がってもたいしてつよくならず、より強い悪魔を仲間にできるようになる だけなので、レベルを上げてビシバシ進むことはできず、かなり悪魔を選んで つれていかないといけないところはいいのですが、それにしても偶発的に 全滅する可能性が高すぎます。一撃必殺魔法をもっている悪魔が非常に多く、 相当な確率で死んでしまううえに、死は即ゲームオーバーです。 ダンジョンも長いので、全滅すると相当気が滅入ります。 とにかく、相当な根性と戦略が必要とされます。 ふつうのぬるいRPGのつもりでやっていては永久にクリアできないでしょう。

うまいかどうかは知りません。なにぶんスーパーファミコンなので、 グラフィックもショボイですし。しかし、一貫した雰囲気をもった 十分にかっこいい絵だと思います。どうもドット絵をいきなり描けるという特殊な 才能の持ち主らしく、シナリオ的に重要な悪魔以外はすべてドット絵が先らしいです。 設定資料集の絵がぜんぜんちがうのはそのためとか。また、キャラは一貫して 8頭身です。あの性能の機械で8頭身というのはかなり無茶ですが 下手にディフォルメするよりははるかにかっこいいものにしあがっています。 スーファミであることを考えれば十分であると言えるでしょう。

音楽

死ぬほどかっこいい曲が目白押しです。おそらくは、普通の人もかっこいいと思う タイプのかっこよさだと思います。しかも雰囲気に非常に合っています。 ちなみにこれの曲はオウム報道の時に頻繁にながされました。 たとえば、サティアンの紹介の時などにうしろでメシア教のテーマがながれて いたりしたのです。ものすごい怪しさでした。 まったくだれが目をつけたんでしょうね。

全体として

人をえらびます。ハマる人は一生忘れられないゲームになるでしょうし、 ぬるいのが好きな人はオープニングだけで逃げだすでしょう。 あなたが根性があるタイプでこういう怪しいイカれたのが好きなら、 ぜひやってみることをおすすめします。 そうでなければ、忘れてください。


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