「真・瑠璃色の雪」感想(Ver.2)

注:以下「バカ」という言葉は極めて好意的な意味で使っています。 「思わず笑いを誘うような、奇妙な、あるいは斬新なセンスの」 というくらいに解釈してください。お願いします。

アイルといえばリバ原。リバ原といえばバカ。 つまりバカ文がウリなギャルゲーです。 さあ、この作品のバカ度はいかほどでしょうか。 元々は98のDOSゲーですが、ここではwindows版の方をやっています。

なお、まだ瑠璃とこるりと陽子と双葉・若葉、雪那、綾霞しかやってません。 とりあえずということで。

ストーリー

床の下から出てきた壷を開けてみると雪女が出てきました。 ああ、どうしましょう。

ストーリーは以上。その雪女シナリオならば彼女が何者なのかが次第に語られ、 最後にはそれなりな山場があって普通に感動的な終わりを迎えます。 他の場合はまあ恋愛ドラマです。雪女は引きたて役になります。 ストーリーそのものはえらく普通でしょう。 出来が悪いとは言いませんし、むしろちゃんとしている方ではありますが、 残念ながら普通の域は出ていません。 この作品に関してストーリーの出来を云々しても それほど意味はないのではないでしょうか。

文章

バカです。キャラがバカでやることがバカだから文章がバカになっているわけですが、 むしろ書き手のバカエナジーがキャラに押しつけられていると言った方が 直感的な説明である気がします。 とにかく、序盤は洪水のようにバカな文章が流れてきます。 バカを前面に出していないところでも、キャラ同士の会話は何かおかしく、 私好みです。

それに加えて心理描写のために使われるちょっとした小道具やエピソードの出来は なかなかで、ちゃんと書くこともできる人のようです。 後半はだいぶシリアスになってきますが、そこの部分もまあきちんとしています。 シナリオによっては語り足りなかったり、 いいかげんだったりするところもある気もしますが、 コメディタッチな作風を考えるとこれでいい気もします。

キャラ

普通と言っていいでしょうが、ライターの感性のおかしさがキャラ描写にはみ出して しまって、普通なキャラでも何か会話がおかしいという事態に なっています。基本的に主人公がバカで、えんえんとバカなことをしまくり、 これにヒロイン達がふり回されるなりツッコミを入れるなりして 会話が進行するわけですが、どうもそのふり回され方もツッコミの入れ方も 奇妙にズレている気がするのです。こういうのは狙ってできることでもないので、 リバ原(シナリオライタ)万歳といったところでしょうか。

しかしまあ、設定やら性格付けだけ見ればやっぱり普通です。 無茶なキャラはいますが、 設定的に無茶なのは見慣れているのであまりおかしく見えないのです。 よくある狂った科学者女や、よくある狂った占い女や、よくある狂った超常現象マニア などは、非常によくあるタイプでひねりもなく、まあ見事に普通でした。 やはりおかしいのは主人公で、ポリシーは一貫しているのに、 行動に一貫性がなく予測がつかないバカをやるあたりがとても素敵でしょう。 爆破が趣味というあたりも個人的に好感が持てます。 けっこうシリアスになってきても言動はおかしいままだというあたり 一番人格が出来ているのは主人公だったということを感じさせます。 もちろん、 他のキャラが始終こんなバカではギャルゲーとして失格だという気もしますが、 それはそれ。

ルール

行く場所を時間ごとに選んでいく同級生タイプのルールに、 朝晩の強制イベントが加わったものです。同級生と違って 自由に行く場所を決めてウロウロできる時間はかなり限られています。 誰がどこにいるかはアイコンで表示されており、攻略も容易です。 が、イベントの数が少なく、結局何かおもしろいことが起こるのは そうやって行く場所を選んだ時ではなくて一日の始めや終わりに起こる強制イベント という気がするのが残念でしょうか。このルールを採用しておもしろくなるための 条件を満たしている とはとても言えません。結局飛ばしている時間が一番長いのですから、 それは問題でしょう。もっと分量を増やすか、 それが無理なら(無理でしょう)形式を変えるべきだったと思います。 また、アイテムの開発期間の長さがどうおもしろさに貢献しているのかが 多少疑問でもあります。攻略にシビアさを出すという目的ならば確かに 貢献していますが、それ以外の意味はなさそうです。

また、操作性、利便性に関するプログラム面はかなり立派です。 右クリックを何にあてるかのカスタマイズ、 声のON,OFF、音源選択、ヘアの有無(これはちょっと…)など とにかくこれ以上にいろいろカスタマイズできるゲームをこの手のものでは 他に知りません。スキップも早く、セーブデータにも状況説明に画面サムネイルまで 付き、まさに至れりつくせり。他もこれくらいやってくれよと本気でいいたくなる 出来です。二周目からは好感度をグラフで表示することもでき、 今起ころうとしているイベントがどの程度の効果があるかまでわかります。 もうやりすぎなくらい親切です。

が、やっぱり問題はゲームの形式そのものにあり、 そのために印象を悪いのはどうにもなりません。 時間つぶし(行く所がない時に時間を経過させるコマンド)の操作性も悪く、 用意したイベントの数が足りないことがかなり致命的になっています。 快適な操作性は良いゲームの印象をより良くしたり、無駄に印象を悪くしたりするのを 防ぐことはできますが、ゲームそのものを面白くすることはできないのです。 しかし、ここまでちゃんと作ってくれるメーカーは本当に少数なので、 ここには是非この調子でがんばってほしいと思います。

原画はあまりうまいとは言えず、 塗りも16色時代を引きずっています。 リメイクなので仕方ないとも言えますが、これでは見劣りするのではないでしょうか。 人物ばかりか背景もあまりきれいではないので、 絵全般に弱さを感じます。 しかし、この人の絵柄はシリアスなシーンになると 急に濃くなるという妙な特徴があり、かなりのインパクトでした。 普通は小さく表示されているのであまりわかりませんが、 デカくなり気合いが入るとゴツいバランスがモロに出てくるのです。 Hシーンの顔なんてもうすごいです。ちなみに主人公の顔もけっこう頻繁に出ますが、 顔の中身が女の子と同じ描き方で描かれているので、かなり濃い気がします。

また、加えて細かいところ。例えば文字ウインドウや、キャラの顔のアイコンなどの 小物もきれいとは到底言えません。そういう細いところに執念を注ぐと もっと見栄えのする今っぽいゲームになっていたのにと思います。

曲は普通ですが、BGMとして合格点をあげられるレベルなので問題にはなりません。 それでいいのです。雰囲気に合っていますし、聞いていて気分がいいです。 CD-DAの音質もなかなかでしょう。

なお、声も気になるほど下手糞な人はいないように感じました。 というかかなりうまいのではないでしょうか。 声があることでちゃんと面白くなっています。 が、男はまるでしゃべらないので、残念といえば残念でしょうか。

全体として

なんといっても売りなのは妙なセンス。あからさまにギャグとして作られたセリフ がおかしいのは当然として、けっこう普通の会話でもおかしいのですから そのすごさは一級品です。 加えてストーリーもちゃんとしており、 キャラも普通に出来が良くいい奴等で、プログラム的にも文句はありません。 バカ以外もなかなか優等生です。 というわけで、バカだけ見ればあとはいらないということもなく、 バカはともかくとして普通に楽しめます。 が、ルール的に多少古くさいのが タマにキズでしょうか。何度もやるのは少ししんどいかもしれません。

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