「ドラゴンクエストII」感想

今もはや古典と化したこのゲーム。 スーパーファミコンでリメイクされたこともあって、 もう一度やってみました。 以下の記述はスーパーファミコン版の話ではありますが、 さほど変化はないように感じます。

ストーリ、展開、イベント

書くまでもなく世界を救う勇者の話です。 古典だけあって、キャラを立てようなどとはほとんどしておらず、 創造力に負うところが大きい作りになっています。 しかし、2人目の王子と会おうとしてもすれちがいの連続でなかなか会えず、 結局そのへんの町で道草していてばったり会う、などというのは、 あの時代にしてはキャラにも気を使ったことの現れではないでしょうか。

しかしなんだかんだいって、 このゲームのおもしろさは 異様なまでに絶妙なバランスにあります。

ルール、システム

絶妙の一言に尽きるでしょう。 とにかく苦労せずに進むのはほとんど不可能です。 どこへ行っても、「こいつはヤだ」と思う敵が一種類はおり、 そいつのためにえらい苦労を強いられます。 しかし、そのわりに少しレベルが上がると、なんとかなってしまうのです。 決してザコになるわけではありませんが、 「なんとかなる」のです。 この「なんとかなる」というバランスはとても貴重で、 レベルを上げるとあっというまにザコと化すのはつまらないですし、 逆にいくらやってもしんどいのが変わらないと進めません。 知略の限りを尽してやらないとダメというほどでもなく、 あんまり無造作だと進めない。 人によってそう感じる難易度は違うとはいえ、 これはかなりいいラインを設定していると思います。

また、数字の大きさもちょうどいい感じです。 ダメージが10程度から始まって100程度で終わる というのは成長が遅すぎもせず速すぎもしないいいラインでしょう。 ダメージ数千になってしまうゲームの場合、よほど長いゲームでない限り必然的に 数字の増える速度は速くなり、 「レベルを上げればすすめる」という保証のようなものができてしまいます。 そうなるともう緊張感はありません。 逆に強くならなすぎるとしんどくなります。 Wizzardryのようにいつになっても死にかねないのは、 こういうストーリーの明確なゲームにはしんどいでしょう。

ただし、やはりレベルが上がるまでがかなり遅いです。 相当経験値ためをやらねばなりません。 ゲーム時間のほとんどが戦闘という状態になってしまいます。 昔のものですから仕方ありませんが、 これからのゲームでこういうことがあったら、責められて当然でしょう。

あと特筆すべきはパーティーの強さのバランスです。 一人目は戦士で、耐久力、攻撃力ともに優れていますが、 魔法が使えません。二人目は魔法も使えるし、攻撃もちょっとはできます。 三人目は完全に魔法使いで、武器で攻撃するのは無駄です。 と、これはいいのですが、どういうわけか二人目と三人目が本当に弱いのです。 打撃を食らうとかなりの頻度で死にます。 この二人は防御力が同じくらいで、生命力もどっこいどっこいです。 ただ二人目の方が多少マシな武器を使えるために、 つい直接攻撃をさせてしまいます。 するとあっというまにボコボコにされてしまうのです。 二人目を防御(ダメージ半分)させておけばいいのですが、 そうすると攻撃をするキャラが一人になり、 敵を片づけるのに時間がかかりすぎます。 それで止むをえず参加させるのですが、 これがあっという間に死ぬのです。いらないほど弱くないけど、 使うと死ぬというこのバランス。 魔法の配分も見事です。 ボス戦など直接攻撃は一人でいいので二人目は一見いらないのですが、 ちょうどよく使わざるを得ない魔法をもっているので、 死んだままにもできません。 防御力増強の魔法なしではボス戦はしんどいですし、 回復魔法も貴重です。 二人目を死にっぱなしにしておけば回復せねばならないキャラ2人になりますが、 回復要員一人で2人の回復は間にあいません。 しかし実に絶妙なことに回復要員2人だと3人の回復はギリギリ間にあうのです。 さらに、ファミコン版では蘇生できるのはこいつだけでした (スーパーファミコン版は三人目も使えるので、少しぬるいと私は思います)から、 こいつが死ぬのは終わりを意味します。そして一番死にやすいのです。 町に戻る避難の魔法を持っているのも二人目だけなので、 途中で死ぬと帰ることもできず全滅しかなくなってしまったりします。 このへんで苦労するのが非常におもしろいわけで、 なんともよくできていると言えるでしょう。

こういうわけで、 パーティー人数を無闇に増やしても戦術性は高くは ならないということがよくわかります。 魔法の種類も少ないですが十分ですし、 いらない魔法がほとんどありません。 なんとも作りこまれています。

ただ、難点があるとすれば、何ら新しい試みがないことです。 それまであったゲームのいいところを拾ってきて、 バランスを整えたものにすぎません。 しかし、当時はこれで十分斬新だったので、責めることではないでしょう。 今のゲームが今だにこれのマネをしていることこそ責められるべきなのです。

モンスターデザインの話ですが、 かわいくていいです。鳥山明の絵はやはりいい雰囲気を持っています。 ファミコンの寒い解像度でも、 ちゃんと何がかいてあるかわかるように描かれているあたりも丁寧さを感じます。 ただ、親しみやすすぎるあたりが、 人によってはマイナスかもしれません。

ちなみに絵とは関係ありませんが、 モンスターの名前がわかりやすいのはとてもいいところです。 あまりマイナーな神話から持ってきたり、 適当にカタカナを並べてつけたりすることがほとんどありません。 「デビル」とか「ドラゴン」とかのカタカナをちょっと修飾したり、 もじったりする程度なので誰でもなんとなくイメージがわくのです。 かなりの数「あくましんかん」や「ぐんたいアリ」のような日本語の 名前があるのもポイントが高いところです。 結果、モンスター一種一種が立ちますし、印象にのこります。 ファイナルファンタジーなどはなにやらわからんカタカナをならべたり、 どこのかもさからない神話から多くもってくる上に、 デザインが低解像度では何が書いてあるかわからないものだったため、 ほとんどと言っていいほどモンスターの印象が残りません。 特にザコモンスターともなると印象など皆無で、 ただの路傍の石ころと何ら変わらないのです。 ドラクエが伝統的にそういうことをしないのは非常に評価できます。

最高レベルです。 いかにクラシックのパクリであろうと、 ゲームに合っていて印象が強ければそんなことは問題ではありません。 そして何より耳にこびりつきます。 何年たってもなぜか聞くと思い出す、 というゲーム音楽として最高のものだけが持つ力を持っています。 パクリ元がもともと歴史的な価値すらもつクラシック音楽で、 それに一級のアレンジを加えたようなものですから、 それも当然でしょう。

そしてこれが重要なのですが、 他のゲームの音楽には全く似ていません。 クラシックと似ていても、他のゲームと似ていない以上、 これは独自な音楽と言って良いのです。 その証拠に口ずさんでいて、他の曲と混ざることがありません。

ちなみに、 これの戦闘はゲーム史に残る名曲だと思うのですが、どうでしょう。 30秒もないループで同時3音での曲ですが、 それにも関わらず、というか、それゆえにというか、 強いインパクトをもっています。

なお、スーパーファミコン版は音質こそいいものの、 音色の選択やアレンジがいまひとつでした。 いっそファミコン版の方が思い切った音だけに かっこよく聞こえます。 特に戦闘はなにかのっぺりしてしまってもったいなかったです。

最後に

おもしろいゲームで、歴史に残るでしょう。 それはほとんどがその絶妙なまでのバランスと、 いきとどいた気配りによるものです。 ゲームとはかくも丁寧に作られるべきものなのだと言えるでしょう。 なお、時間がない状態で作っていてたまたま このバランスになったという説もありますが、 出来がいいことにはなんら変わりはありません。 これがたまたまだったからといって、 バランスの悪いものを出していいということにはならないのです。


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