z 「ドラゴンクエストI」感想

「ドラゴンクエストI」感想

RPGというものを日本人がやりやすい形にした初めての作品であり、 まさに歴史的な作品と言えます。 古い作品だけに出来がどうこう言っても仕方ないのですが、 せっかくやったことですし感想くらいは書いておこうと思います。 なお、スーパーファミコン版をやっての感想です。

まず、ストーリーに関しては何も言うべきことがありません。 伝説の勇者が魔物を倒しにゆく、まさに王道にして基本といえましょう。 光の玉というのがどういう発想によるものかはわかりませんが、 実質的には何もストーリーにからんでこないので、 どうでもいいといえばどうでもいいものになっています。 また、スーパーファミコン版はIIIの後ということもあり、 各所にIIIとの連続性を表現するセリフが入っていますが、 これは当然のようにやりたくなることでしょう。

そういうストーリーなので、イベントもなんら凝っているとは言えません。 「銀のたてごとを持ってきたら雨雲の杖をやろう」などというのは、 まさにRPGの基本たる「おつかい」です。 「試練」という名前をつけることもありますが、 典型的な「おつかい」をそのまま用いています。

ただ、たまに光るところがあったりもします。 ガライの墓に下りる時に老人が「ここから帰ったものはいない」と いうようなことを言ってフっと消えたり、 ローラ姫を助けて城に連れ帰る途中に宿屋にとまると朝に 「ゆうべはお楽しみでしたね」 などと言われたり。大筋が教科書通りでも、 そういうことがあるとだいぶうるおいがでます。

ルールについても、基本です。 ただ、お手本であったWizzardryやultimaのシビアさをそのまま使わず、 乱数幅を狭くし、レベルアップが確実な強化を約束してくれるあたりが 成功の元といえるでしょう。 どんなにしんどくても、レベルさえ上げればなんとかなるのですから、 ほぼ全員がクリアできます。それがいいか悪いかは別にして、 「買った全員がクリアできるゲームを作る」という方針は これが初めてなのではないでしょうか。

バランスに関してですが、敵はかなり強いです。 少しすすむと、非常に苦戦する敵が一種類は出てきます。 マイラ周辺のがいこつ、 そしてリムルダールのリカントなどがいい例です。 特にリカントは7レベル程度だと ラリホーなしでは死ぬしかないほど強く感じられ、 その結果印象の強い敵になっています。 ただ、スーパーファミコン版は難易度がだいぶ下がっているように思えます。 あれほど強敵だった「しにがみのきし」や「ダースドラゴン」が まるで印象がなく、竜王もはっきり言って弱いとすら感じられます。 オリジナルではこちらからの攻撃は10点程度しか当たらないのに、 向こうからは毎ターン50点近い打撃にさらされるというかなり シンドイ設定だったのですが、スーパーファミコン版では 20点以上のダメージもあたりますし、相手もかなりの確率で10点程度しか受けない ショボイ炎を吐いてきます。おかげであっさりと倒せてしまいました。 また、フィールドの1マスが4分の1に分割され、それにもかかわらず一歩ごとに HPが回復するロトの鎧の効果が変わらないため、事実上回復率が倍になり、 竜王の城でさえほとんど回復魔法を必要としませんでした。 多少ダメージを負っても、次の敵が出る前にはたいがい回復しているのです。 このあたりは少々ぬるくなりすぎたと思います。

なんにせよ、歴史的な作品であることは確かです。 功績は大きいでしょう。しかし、 後のゲームが現在に至るまでこれのマネをしているのを見ると、 なんともやるせない気持ちになります。 エニックスを含めて、過去の遺産によりかかってゲームを作る態度を 改めてもらえるとうれしいのですけれど。

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