「Be-Yond」感想

元々98DOSゲーだったのを山と絵やら ムービーやら声やらを足してリメイクしたものです。 これがまたなかなかおもしろかったので感想文を書いておきます。

なお、レンとアメジストしか見ていないのをお断りしておきます。 分岐時期がほとんど最後なので、 いちいち見てもそう新鮮なことはないと思うのですが、 もしなにかおもしろいことがあるならやりますので教えてください。

ストーリー

目が覚めたらいきなり魔王だった主人公がたった一人の下僕をひきつれ、 鳳王という天下無敵の宇宙船にのって宇宙を旅しながら、 なにかとやっかいごとに巻きこまれ、 仲間というか下僕というかそういう女の子を増やしつつ生活していく話です。 いきなり魔王という段階ですごいですが、世界観はSFで、 主人公の名前は宮本小十郎です。いかにもな魔王の格好をした化物にむかって 「宮本さん」と呼びかけるシーンはものすごい新鮮さでした。 というわけで、ギャグというかバカ系です。 バカは種類としては80年代の無理矢理なノリそのまんまですが、 かなりのレベルなので相当笑えます。 けっこう人が億単位で死んだりしてますが、 深刻な書かれかたはまるでしていないのでなにも気になりません。 「ギャグ漫画で人は死なない」を地で行く作品です。

構成としては10章構造になっており、 一章あたりだいたい1時間かからないくらいです。 ちょっとやるにはなかなかいい構成です。 各章にHシーンもありますが、 軽いタッチでギャグの一環として扱われている気がします。 全部の章で一応の起承転結をつけているあたりがなんともプロの作りを感じさせる ところです。

なお、始終バカなのはともかくとして、一応だんだんシリアスにもなってきます。 シリアス部分の出来もなかなか悪くなく、 ちっと感動した気分になれるのが素敵です。 設定が陳腐でダサくてノリが80年代なのも、ここまでやられればネタとして 認識されるので気になりません。そうやっていらない障害がとり払われてみると、 単純にいい話として読むこともできるようです。

それにしても、いろいろと語り足りないところや、適当に済ませてしまっているところ がけっこう目につきます。気にしなければいいのでしょうが。

人物

立ちすぎです。魔王だけど頭の中は単なる一庶民な小十郎、 理由もわからないがそばにいる下僕、 正義漢と使命感と思い込みの強さと強情さ故に巻きこまれた不幸な警察官、 とにかく泣き叫びまくるが頭が良くなくてコロコロ気分の変わる賞金稼ぎ娘、 勝手この上ないお姫様、鎧着て剣をふり回すけども素直で一本気な女。 それはもういかにもなキャラ作りではありますが、これがまた見事な漫才を くり広げてくれるのでたまりません。実在感どうのこうのを言う前に、 見ていて楽しいです。やりすぎに楽しいです。

ルール・システム

コマンド総当たり方式アドベンチャーで、すでに5年前に滅んだはずの遺物です。 話す、考える、移動する云々ってやつです。 というわけでそれに関してはまるで見るべき点がありません。 また、そのコマンドでは分岐せず、分岐は途中で出る選択肢でしか起こらないので コマンドを選ぶ順番のように把握不可能なもので明暗が分かれることはありません。

スキップも早く、機能や速度においてはなんら不満はありません。 また、緊急避難ボタンがついており、これをクリックすると一瞬で 画面がまるで関係ないものに切り変わります。会社やらでやっていて、 見られては困る人が接近してきた時に押すというコンセプトですが、 エディタの画面になれば辞表を書いてる画面になるわ、 2D格ゲーの画面になるわ、 他のエロゲーの画面が出るわ(ハズレとか出る)でまるで役に立ちません。 シャレにここまで執念を注ぐ根性は見習いたいものです。

キャラの絵やデザインは80年代の亡霊のようなもので、 一言で言えばダサいです。塗りもどこか16色をひきずったあとがあります。 しかしまあ、ここまでやられるとネタにしか見えないので まるで気になりません。また、一箇所すごく日本な田舎の婆さんが出てきますが、 この顔の味があることといったら。ネタに執念を燃やす心意気ではないでしょうか。

そして各所に挿入されたやりすぎな3Dムービーがまたたまりません。 質としてはショボいのですが、やりすぎにそれっぽいのでそれはもう大変です。 オープニングからエンディングに至るまでSF洋画風な演出をしたりして、 それはもう執念の感じられる出来でした。

また、画面レイアウトも80年代SFっぽく、コマンドのアイコンまで 凝りに凝っています。コンピュータを使わずにコンピュータの画面を表現していたころ のコンピュータ表現といったらわかるでしょうか。

曲、効果音に至るまでやはりやりすぎにそれっぽい作りです。 SF映画っぽい曲から、それっぽく悲しげなオルゴールまで、 それはもうそれっぽく出来ています。効果音も質が良く、 非常にそれっぽくなっています。 特に爆発音の質の良さはこの手のものではトップクラスでしょう。

また声ですが、やりすぎに演技がうまくそれはもう楽しげです。 80年代ドタバタアニメそのまんまな世界が広がります。 確認した限り下手糞が一人もいません。 が、これはエロゲなわけで、当然声優の名前は出てないようなのです。 ひょっとしたらかなり有名な人が多いのかもしれません。 どこかで聞いたような気がしないでもない声ばかり聞こえます。 エロシーン付きで。

全体として

歴史的に重要なギャルゲーとは到底言えず、思想があるわけでもなく、 とりたてて斬新なわけでもない作品です。しかし、この徹底したバカさと アンバランスさへの執着は尋常ではありません。 リメイクによる追加要素がいい方に働いた好例とも言えるでしょう。 1徹夜(一晩の意)で片づくゲームなので、 ちょっとした息抜きにおすすめです。かなり楽しめました。

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